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茶碗蒸しの一生 ー夏ー

衝撃のリアル サドン・アタック

 茶碗蒸しが本家に戻れという便りを受け取ったのは,夏の只中のことだった.
 その日,茶碗蒸しは,やることもなかったので,ぶらぶらと目的もなく町内を散策に出かけていた.陽光がアスファルトを焼き,蝉の声に辺りは絶え間なく包み込まれている.道中に通りがかる高校のグラウンドでは,大会で早々と敗退が決まり,三年生の去った野球部が,秋の新人戦を目指して懸命の練習に打ち込んでいた.蓋を伝う汗をぬぐいながら,ひとしきりその様を眺めて満足した帰り道,青果店の店先で目についたスイカを抱えて家に戻ってきたのだが,偶然そこで郵便配達の男が郵便受けに何かを投函しているところに出くわした.
 自分宛に何か特別な便りが来るあてもなかったので,どうせくだらないダイレクトメールか何かだろうと思いつつも,重たいスイカを脇に置いて,郵便受けに手を伸ばした.取り出したそれは,一見しただけで思っていたような内容のものではないのはわかった.どこをみても商売っ気のかけらもない無愛想な封筒には,手書きで茶碗蒸しの名と住所が記されていた.どうやら,誰か個人が出した便りらしい.自分宛に手紙が送られてきたことを意外に思いながら,差出人を確かめようと裏に目をやると,そこに記されていたのは本家の名であった.
 自分宛に本家から手紙が寄越されることなどそうそうない.中に書かれていることは暑中見舞いやら何やらの,のんびりしたものではないだろう.茶碗蒸しは心中に穏やかならぬものを感じつつ,せっかく買ってきたスイカを冷やすことも忘れて書斎に向かい,封筒を開けた.
 そこには,本家の茶碗蒸しが倒れたこと,跡目を期待されていた茶碗蒸しは跡を継ぐことを承伏しようとしないこと,そして茶碗蒸しに本家に戻るように,というようなことが書かれていた.
 一通り目を通した後,茶碗蒸しは胸中で,何を今更,と毒づいた.俺の茶碗蒸しを認めなかったのは,本家の連中ではないか.自分たちの茶碗蒸しだけに執着し,何一つ受け入れようとしなかった.あの日,俺の茶碗蒸しを見たときの,連中のさげすんだ目は,今まで忘れたことはない.
 誰が戻ってやるものかという思いではあったが,本当に無視をするわけにはいかないことも,茶碗蒸しにはわかっていた.己の茶碗蒸しを否定され,身一つで本家を出奔した茶碗蒸しであるが,本家には残してきた妹の茶碗蒸しがいるのだ.なにも本家の連中も人非人ではない,自分が家を出たからといって,妹につらく当たっていたというわけではないことは,人づてに聞いていた.だから,今回も自分が戻らなかったからといって,妹に害が及ぶ訳ではないだろう.そのことについては,茶碗蒸しは心配してはいなかった.だがしかし,このまま家長の茶碗蒸しが回復せず,跡目候補の茶碗蒸しも跡を継がなかったとしたら,本家を継ぐ者がいなくなる.そうなればあの家は保たないだろう.そのとき,今まで本家に守られてきた妹はどうなる.妹は独り立ちするにはまだ早すぎる.妹には本家の加護が必要なのだ.それを考えれば,本家の呼びつけを無視することなど,茶碗蒸しには到底不可能なことであった.

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職業:ナイト
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